SEASON1-12

株式会社 絵画保存研究所

Art Conservation Lab.

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更新日 2014-11-07 | 作成日 2008-04-01

SEASON1 第十二回目 

絵画の科学的調査1(普通光・透過光・顕微鏡)

科学的調査の1回目は、まず、基本的な調査の方法についてご紹介します。
 

1. 普通光線下での調査

絵画を鑑賞するときのように光を当てて観察します。絵画の構造や画家の技法などを含めた基本的な状態を観察します。裏面と画面の両方の観察を行います。絵画の色や艶などの作品の性質に加えて、画面の汚れや亀裂や剥落などの損傷についての情報が得られます。
chousa01.jpg絵画亀裂部分。普通光線(クリックで拡大)

2. 斜光線下での調査

絵画の横方向や上下方向から斜めに光を当てて観察する方法です。亀裂や絵具の浮き上がりなどが、普通光線で見たときよりはっきりと観察できます。亀裂の盛り上がりの程度や画面の歪みを見ることができます。普通光線ではあまり目立たない亀裂が、斜光線で見ると非常に目立って見えることがあります。絵具層の凹凸を観察するのに非常に役立ちます。
chousa02.jpg絵画亀裂部分。斜光線(クリックで拡大)

3. 透過光による調査

画面側から光をあて、作品を裏から観察する方法です。このように観察することにより、画面からは見えない絵具層やグランド層の様子、又、穴などの損傷が見えることがあります。絵具層が厚くて光を透過しない場合にはできない観察方法です。
chousa03.jpg透過光。裏面より見える下地塗布跡(クリックで拡大)

4. 双眼顕微鏡下での調査

画家の技法や損傷が詳しく観察できます。付着物とカビを見分けたり、結晶の発生を確認したりすることも可能です。手書きと印刷などの違いや、真贋を見分けたりする際にも役立ちます。倍率は15倍から150倍程度まで。デジカメで写真も取れます。カビの場合、顕微鏡下で見ると、カビの胞子が広がっている様子がよく分かります。
chousa04.jpg顕微鏡写真。カビの胞子が広がってい様子(クリックで拡大)