SEASON1-16

株式会社 絵画保存研究所

Art Conservation Lab.

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更新日 2014-11-07 | 作成日 2008-04-01

SEASON1 第十六回目 

絵画の科学的調査5(分析Ⅲ その他:クロスセクション・偏光顕微鏡)

今回は、科学的調査の最終回です。絵具のクロスセクションと偏光顕微鏡を使った分析方法をご紹介します。

1. クロスセクション 

クロスセクションとは、絵画の亀裂や剥落などがある部分から、ごく小さい絵具のサンプルを採取し、樹脂に埋め込んで絵具の層の様子が見えるようにしたものです。層の構造を見るだけではなく、特定の層の特定の顔料にターゲットをしぼって分析したり、絵具層ごとに媒材を分析する場合にも用いることができます。_クロスセクションのためには、亀裂が入っている割れ目などから、非常に小さいサンプルを採取します。顕微鏡で見なければサンプルを取ったことがわからないくらいの大きさです。サンプルを採取するときは、最上層のニス層から最下層のグランド層まで、すべての層が入るように採取します。樹脂に埋めた後は、層の様子が見えるところまで削ります。

cross01.jpgクロスセクション1(クリックで拡大)
cross02.jpgクロスセクション2(クリックで拡大)
cross03.jpgクロスセクション2採取絵画(クリックで拡大)

2. 偏光顕微鏡

偏光顕微鏡は、薄片試料に普通の白色光とは違って光の電磁波の振動方向に偏りのある偏光という特殊な光線があたるように偏光装置が組み込まれています。_偏光装置は、ポーラライザーとアナライザーという2つの部分から成っています。ポーラライザーを通った偏光が結晶性物質に入ると、屈折率の小さい光と大きい光に分かれ、この2つ以上の光がアナライザーを通過するときに合成されて1つの波となります。ポーラライザーは固定されていますが、アナライザーは動かすことができるようになっています。_アナライザーを出し、ポーラライザーを通った偏光だけで観察するとき、この状態を開放といいます。このときの視野は明るく見えます。また、アナライザーを入れた状態を直交といいます。直交のときの視野は暗黒になっています。直交状態で石膏検板を入れると紫色の視野になります。_アナライザーで合成された光の色や特徴は、結晶性物質の光に対する性質によって異なるので、その特色を読み取ることによって物質の同定ができます。絵画の場合は顔料や繊維の分析に用います。

pm01.jpgアズライトの変更顕微鏡写真 直交状態+石膏検板入り(クリックで拡大)
pm02.jpgアズライトの偏光顕微鏡 写真 直交状態(クリックで拡大
pm03.jpgアズライトの偏光顕微鏡写真 開放状態(クリックで拡大)