SEASON1-21

株式会社 絵画保存研究所

Art Conservation Lab.

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更新日 2014-11-07 | 作成日 2008-04-01

SEASON1 第二十一回目 

油彩画の修復処置Ⅴ(ルースライニング・ケミライニング)

修復処置の最終回は、ルースライニングとケミライニングの処置をご紹介します。ルースライニングとケミライニングは、現在ある損傷を直す処置ではなく、構造に関係して将来起こるであろう損傷を防ぐための予防処置です。

ルースライニング

絵画を一旦木枠から取り外し、布を木枠に張ってから、その上に絵画を張る方法です。接着剤は使用しません。木枠の桟による亀裂(ストレッチャー・クリース)が起こりにくくなります。また、移動の際にはキャンバス布の揺れを抑えます。本格的な裏打ちとは異なってキャンバスに布を接着しないので、将来の修復処置の際などにルースライニングの布を外すことは容易です。

21-a.jpgルースライニング(クリックで拡大)

ケミライニング

絵画を木枠から取り外すことをせずに、布を絵画のキャンバスと木枠の中桟の間に滑り込ませ、引っ張りながら木枠の縁に止めていく方法です。簡単に装着と取り外しができます。木枠の表面を覆う繋がった布の層を作ることになるので、中桟による亀裂(ストレッチャー・クリース)を防ぐことができます。また、キャンバス裏側の空気を動きにくくし、十分な張力で張ることによりキャンバスの振動の波を打ち消すこともできるので、キャンバスの揺れを抑えることができます。

  • ※木枠に取り付けられる裏板も、絵画の裏に何かが当たるなどした場合のアクシデントによる損傷を防ぐという他に、キャンバス布裏側の空気を動きにくくして布の揺れを抑えるという働きもあります。

21-b.jpgケミライニング(クリックで拡大)