SEASON1-18

株式会社 絵画保存研究所

Art Conservation Lab.

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更新日 2014-11-07 | 作成日 2008-04-01

SEASON1 第十八回目 

油彩画の修復処置Ⅱ(剥落止め・亀裂のばし・モイスチャートリートメント)

修復処置の2回目は、剥落止め、亀裂のばし、及びモイスチャートリートメントの処置をご紹介します。

剥落止め

剥落止めの処置は、浮き上がっている亀裂や剥落部に行います。症状や素材の性質により、適切な接着剤を選んで用います。接着力を強化し、絵具層の浮き上がりを抑えるために、接着剤をさした部分を温めることもあります。原則としてクリーニングの後に行いますがが、症状がひどくてクリーニングを行えないような場合にはクリーニングの前に行う場合もあります。必要に応じて、接着した部分が完全に接着するまで重石を置きます。

18hakuraku01.jpg剥落止め前、浮き上がり(クリックで拡大)
18hakuraku02.jpg剥落止め後、平らになった浮き上がり(クリックで拡大)

亀裂のばし

絵具層に亀裂が発生すると、亀裂部分がキャンバスを引っ張り、盛り上がった状態になることがあります。絵具層やグランド層がキャンバスから離れて浮き上がった状態になっていることもあります。このような亀裂を元通りに平らにする処置が亀裂のばしです。_亀裂のばしの際には、水分や低温の熱を用いて、亀裂やキャンバスの歪みを平らにします。こてやホット・エアを用いて部分的に行う場合とホットテーブルを用いて全体的に行う場合があります。

18kiretsu01.jpg亀裂のばし1、接着剤さし(クリックで拡大)
18kiretsu02.jpg亀裂のばし2、ホットエアで温め(クリックで拡大)
18kiretsu03.jpg亀裂のばし3、こてで伸ばす(クリックで拡大)

モイスチャー・トリートメント 

全体的に亀裂のばしを行ったりキャンバスの歪みを改善する方法です。湿気(モイスチャー)を加え、絵具層に発生した多数の亀裂や全体的に波打っているキャンバスを平らにします。ゴアテックスを用いて細かい分子の水蒸気のみを絵具層に入れる方法、ホットテーブルを使う方法、また、網を使う方法など、モイスチャーを入れる方法にはいろいろあります。

18moist.jpgモイスチャートリートメント、モイスチャー加え中(クリックで拡大)