SEASON1 第二十二回目
板絵の構造
今回は板に描かれた油彩画の構造について取り上げます。
板絵は、西洋では板に描かれた宗教画が13世紀頃に多く生み出され、キャンバス画に移行する16世紀頃まで主流となっていました(初期は油彩ではなくテンペラ画)。日本では、20世紀になってスケッチ板が販売されてから、手軽な材料として多くの画家に使われています。熊谷守一や山口長男は、板絵の作品を多く残しています。
板絵の構造
一番下が支持体の板で、その上にグランド層(下地)、絵具層及びニス層があります。
板
A(柾目板)は、木目が平行に走っています。1本の木材から僅かしか取れません。上下左右同じ割合で縮むので歪みが起こりにくくなっています。C(板目板)は、年輪の外側に向かってより縮むので反ってしまいます。
13世紀頃は、大きい板絵には、パネルを平らに保つため、額として周囲に木の枠が取り付けられました。その後、板の裏に桟を取り付ける、クレードルという方法が発明されました。木目に沿った方向の桟は固定され、木目に垂直な方向の桟が動くようになっています。しかし、歪みを完全に抑えることは難しく、かえって割れなどが起こりやすくなる場合も見られます。
板に描かれた絵の保存は、最も難しいというのが定説となっています。板絵は、外界の湿度の変化に応じて動き、歪んだり変形したりすることもあるからです。ベニヤ板は変形を起こりにくくするために開発された材料ですが、接着剤による劣化促進の問題が浮上しています。
板絵裏面のクレードル(クリックで拡大)
板絵部分(クリックで拡大)