SEASON1-20

株式会社 絵画保存研究所

Art Conservation Lab.

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更新日 2014-11-07 | 作成日 2008-04-01

SEASON1 第二十回目 

油彩画の修復処置Ⅳ(充填・補彩・ニス)

修復処置の4回目は、充填、補彩及びニス塗布の処置をご紹介します。

充填、補彩

充填とは、剥落部に充填材を入れ、高さを周辺のオリジナルの絵具層と合わせる処置です。多くの場合は、炭酸カルシウムと膠を混ぜたものを充填材として用います。
補彩は、剥落部に色を入れる処置のことです。通常は剥落部をまず充填材で充填し、その上に行います。オリジナルの絵具を傷めずに除去することができ、かつなるべく安定な修復用の色材を用います。剥落部のみに行い、オリジナルの絵具層の上にはかからないようにします。油彩画の場合は、補彩に油絵具を用いるのではなく、水彩や樹脂絵具など、あえて油絵具とは溶解度が異なる絵具を用います。

20juten.jpg充填後(クリックで拡大)
20hosai.jpg充填部に補彩後(クリックで拡大)

ニス塗布

ニスの塗布が必要な作品には、修復処置の仕上げとしてニスを塗布します。元々ニスが塗布されておらず、ニスを要しない作品についてはニスを塗布しない場合もあります。作品を適切な艶にでき、かつ将来除去が必要な場合に絵具層を傷めずに取り除くことのできるように、ニスの塗布方法や種類を選びます。ニスは汚れやすく、種類によっては変色するものもあるので、後に簡単に除去できるニスを選ぶことが大切です。ニスには天然樹脂のニスと合成樹脂のニスがあります。天然樹脂のニスは変色しやすいという問題がありますが、使用に歴史があり、また自然な透明感があります。一方、合成樹脂は人工的な艶になってしまうことがあるという問題がありますが、変色や劣化が起こりにくいという利点があります。
板絵の場合は、板の動きを抑えて作品に危険な症状が起きる可能性を低くするため、湿度遮断材として裏面にニスを塗布することがあります。

20varnish01.jpgニス塗布前、白っぽくなっている(クリックで拡大)
20varnish02.jpgニス塗布後(クリックで拡大)