SEASON2-10

株式会社 絵画保存研究所

Art Conservation Lab.

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更新日 2014-11-07 | 作成日 2008-04-01

SEASON2 第十回目

日本画の状態②

今回は、日本画の状態のうち、特に近代の材料や技法に起因した症状について取り上げます。

近代日本画の劣化
すでにコレクター大学32.日本画の技法②でご紹介しておりますように、明治時代以降、日本画に新しい材料や技法が取り入れられるようになりました。そのため、近代の日本画には、伝統的な古い時代の日本画には見られなかった症状が発生することがあります。
34nihonga01.jpg日本絵具とアクリル絵具の併用により発生した亀裂、浮き上がり、剥落
支持体の劣化近代日本画に用いられる紙は、木材パルプを含んでいることがあり、そのために弱く、破れることがあります。
絵具層の劣化厚塗りで描かれている場合は、形の縁に沿って亀裂が発生したり、絵具層が紙を引っ張って紙が裂けたりすることがあります。また、染料系の絵具が用いられている場合は、光による褪色が起きる場合があります。これは、近代の日本画が西洋画のように扱われ、長期間展示されることが多いことも一因です。新岩絵具のうち、鉛を含む絵具は変色を起こします。また、絵具の媒剤に樹脂が用いられているときは、下層の支持体や絵具層との接着力不足などのため、絵具層が離れて浮き上がりが発生することがあります。
34nihonga02.jpg鉛を含む絵具で描かれた花弁が黒変した例
仕立てに起因した劣化作品がベニヤパネルに直接貼られていると、ベニヤからの酸のために紙が酸化して脆くなります。また、ベニヤパネルに用いられた接着剤から出るホルマリンのために、絵具の変色が起きた例も見られます。
34nihonga03.jpgベニヤパネルの酸により裏打ち紙に茶色いしみが発生(クリックで拡大)