SEASON2-20

株式会社 絵画保存研究所

Art Conservation Lab.

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更新日 2014-11-07 | 作成日 2008-04-01

SEASON2 第二十回目

調湿ケース・調湿額

今回は、美術品を良い状態で保存するために用いる調湿額と調湿ケースを取り上げます。

調湿額
調湿額は、絵画を入れておく額を密閉構造にし、調湿剤を入れて中の湿度が一定になるようにした額です。常に湿度が適切な範囲になり、湿度変化が小さくなるため、絵画の素材の動きが抑えられ、歪みや亀裂などの損傷が起きにくくなります。また、カビや結晶の発生も防ぐことができます。
44chositsu01.jpg調湿額例
密閉額内に入る全ての材料は、不活性であり、あらかじめ温度20℃程度、湿度50%位に調整されていることが必要です。透明板としてアクリル板かラミネートガラスを使います。普通のガラスだと細いひびなどから額の中の状態が狂ってしまうことがあるからです。内在させるメタル枠に透明板を接着し、密閉額にします。次にそれを額縁にはめ込みます。こうしてほぼ密閉に近い状態の額ができ上がります。
44chositsu05.jpgメタル枠内に絵画を設置して密閉額にする
しかし、紙やキャンバスなどの材料は、湿気を吸い込む速度の方が放出する速度より速いため、たとえ相対湿度50%のもとで作品を調湿額に入れても、長期間そのままにしておくと、湿気が溜まって危険な状況になる可能性があります。調湿額には調湿剤を入れ、額内の温湿度を常にモニターする必要があります。
44chositsu02.jpg調湿額例(裏)
調湿ケース
44chositsu04.jpg調湿ケースに絵画設置後
大きい絵画の場合などには、美術品を入れる展示ケースを調湿ケースにすることもできます。その場合、まず、建物の壁にフィルムを埋め込むなどして密閉状態にできる場所を作ります。そして、RH50%に調整した調湿剤をケース内に吊るし、それから絵を設置します。ケースの下側はドアで開閉できるようにし、調湿剤や温湿度を常時モニターするための機材を入れます。
44chositsu03.jpg調湿ケース内に調湿剤を吊るしたところ