SEASON2-8

株式会社 絵画保存研究所

Art Conservation Lab.

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更新日 2014-11-07 | 作成日 2008-04-01

SEASON2 第八回目

日本画の技法②(近代日本画)

今回は、日本画の技法のうち、最近の日本画の技法についてご紹介します。
32nihonga03.jpgアクリル絵具を使用して描かれた日本画部分

近代日本画の技法
明治時代以降、伝統的な素材と技法を用いながら、自由な表現を押し進めようとする動きが強まりました。
支持体は、明治時代以降、和紙製造の際にはしばしば木材パルプが加えられるようになりました。大正時代には、長い間途絶えていた麻紙が再び製造開始されました。また、伝統的な楮、三椏、雁皮で作られた伝統的な和紙に変化をつけた和紙も登場します。艶のある和紙にするために雁皮を多く入れた和紙や、染めた紙繊維を混ぜた色付きの和紙などがそれに当たります。このような和紙は市販されているものもあり、作家にちなんで、大観紙や十畝紙などの名がつけられています。
32nihonga01.jpg現代日本画部分、普通光32nihonga02.jpg現代日本画部分、紫外線:手の部分の西洋絵具が紫外線下で蛍光
顔料は、明治時代の終わり頃から西洋顔料の使用が見られ始めます。そして、大正期になって、新しい色材の使用が積極的に取り入れられるようになりました。戦後には、伝統的な岩絵具などに加えて、新岩絵具や合成岩絵具が作られました。(新岩絵具:金属化合物で着色したガラス質材料を砕いて製造した絵具、合成岩絵具:方解石の粉に染料を吸収させて製造した絵具)
32nihonga04.jpg新岩絵具(クリックで拡大)
媒剤は、現在でも膠が主流ではありますが、戦後は酢酸ビニル樹脂やアクリル樹脂などの合成の接着剤も用いられるようになりました。
現在では、伝統的な日本画技法によって描かれる作品のみではなく、絵具を盛り上げて独特のマチエールを創造したり、新しい画材による偶然の効果を取り入れている作品なども見られます。キャンバスボードの上に、西洋の顔料と合成接着剤を混ぜた絵具で描いた作品、エアブラシを用いて描いた作品、パステルで表面の調子を整えた作品などもあります。
32nihonga05.jpg厚塗り日本画部分
絵画の形状は、大正時代の中頃に西洋式の展覧会が多く行われるようになり、パネルに貼って額装するという様式が取り入れられ、段々と伝統的な絵巻、屏風、掛け軸が減りました。1960年代からは、ベニヤ板を用いたベニヤパネルが多く作られるようになり、最近の日本画の多くは、裏打ちされ、ベニヤパネルにあらかじめ貼られた和紙に制作されています。