SEASON2-12

株式会社 絵画保存研究所

Art Conservation Lab.

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更新日 2014-11-07 | 作成日 2008-04-01

SEASON2 第十二回目

日本画の修復②

今回は、日本画の修復の2回目です。近現代の日本画の修復について取り上げます。
36nihonga02.jpg膠ミストによる剥落止め
近現代の日本画は、表現の自由に重点を置いており、様々な新しい材料と技法のために複雑です。

厚塗りで描かれている日本画の場合は、支持体の紙の強度が不足していることが多いので、裏打ちを数回行い、紙を強化する必要があります。また、厚塗りの絵具層の亀裂や浮き上がりの場合、支持体の紙が破れて一緒に浮き上がっていることも多く、膠のみを用いての剥落止めでは接着力が十分ではないケースがあります。そのため、修復用の合成樹脂の接着剤などの使用を検討することもあります。作品を貼る組子パネルは、桟の太い丈夫なものとし、和紙を何層も重ねてオリジナルの支持体の動きに合わせて動くようにします。
36nihonga01.jpg厚塗りの日本画に発生した浮き上がり(A)(クリックで拡大)
36nihonga03.jpg(A)の浮き上がりの剥落止め(クリックで拡大)
また、現代の家屋は気密性が高いために空気の流れが起きにくく、主に膠を媒剤として描かれる日本画にカビが発生し、カビによるしみが見られる例も多く見られます。現代日本画には水により変化が起きてしまう材料や技法で描かれている作品もあり、しみ抜きの際には、サクションテーブルを用いるなどの工夫が必要になります。
36nihonga04.jpgサクションテーブルを用いたしみ抜き(クリックで拡大)
近現代の日本画の複雑な材料と技法に対応するためには、伝統的な日本画の修復技法に加えて、化学的な知識や新しい材料や機材を応用して修復を行うことが必要です。