SEASON2-14

株式会社 絵画保存研究所

Art Conservation Lab.

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更新日 2014-11-07 | 作成日 2008-04-01

SEASON2 第十四回目

表装の技術②

今回は、表装の方法として、掛け軸の仕立て方を取り上げてご紹介します。

一般的な工程として、まず、本紙および周囲にめぐらす裂(きれ)の裏打ちを2回行います(①②)。次に仮張り(③)。切り継ぎ、総裏、仕上げ工程に向かう作業がそれに続きます(④⑤⑥)。

①肌裏打ち:
第一回目の裏打ち。薄美濃紙が使われ、接着は新糊で行われる。新糊の原料は生麩(小麦粉澱粉)。撹拌しながら約20分位煮た後、冷却し、裏ごしする。
38urauchi01.jpg肌裏打ち:糊をつけた和紙を物差しなどで一辺を支えて本紙の裏面に置く。(クリックで拡大)
②増裏打ち:
第二回目の裏打ち。美栖紙を使う。糊は古糊を用いる。寒中に生麩を煮て甕に入れ密封、冷暗所に10年前後ねかせた糊である。表具にしなやかさを保たせ、防黴等の効果がある我が国の伝統的な接着剤である。二回目以後は、全てこの古糊を使用する。ただし、この糊は接着性に乏しいため、それを補うために、よく打刷毛で打ち込んで圧着させることが必要である。
38urauchi02.jpg増裏打ち:撫で刷毛でよくなでながら本紙に裏打ち紙を接着させる。(クリックで拡大)
③仮張り:
増裏打ち終了後、乾燥し、本紙や裂を湿らせてから仮張りに張り、乾燥させる。
38urauchi03.jpg仮張り:裏打ち後、本紙や裂に湿りを入れ、裏打ち紙の縁に糊をつけ、仮張りに張って乾燥する。(クリックで拡大)
④切継ぎ:
その後は、仮張りからそれぞれをはずし、本紙、裂を裁断しながら切り継ぐ。最後に左右の耳を折って両端小口を整える。ここで掛軸の形が形成されることになる。
38urauchi04.jpg切り継ぎ:裂の端5ミリ巾位に糊をつけ、本紙の下方に一文字下をつける。(クリックで拡大)
⑤総裏打ち:
最終の裏打ち。まず上下に八双や軸を取り付ける袋を置く。次に、上部より上巻絹、宇陀紙で裏打ちを行う。
38urauchi05.jpg打刷毛で圧着:総裏打ちはうす糊を用いるため打刷毛で圧着する。(クリックで拡大)
⑥仕上げ:
乾燥後、仮張りに水張りして長期間乾燥させる。途中で掛軸を仮張りからはがし、狂いを直す。掛軸に仕上げる際、裏面にイボタロウを引き、ガラスの数珠でこすりなでて仕上がりを柔かく保ち、また、裏面に光沢を持たせることによってすべりを良くする。次に、軸首を付けた軸木、上端部に八双を付け、最後に風帯、鐶、紐(啄木紐)を付けて完成する。
38urauchi06.jpg仕上げ工程:裏面を数珠でこする。