SEASON2-22

株式会社 絵画保存研究所

Art Conservation Lab.

| HOME | コレクター大学 SEASON2 | SEASON2 第二十二回目 |

更新日 2014-11-07 | 作成日 2008-04-01

SEASON2 第二十二回目

美術品に安全な材料

美術品を良い状態で保存するためには、美術品を取り囲む素材に気を配る必要があります。今回は、美術品に安全な材料と問題のある材料を取り上げます。

  • 美術品に対して安全な材料は、長期間変化しないか変化が僅かである材料です。添加物の加えられていないものを選ぶことが大切です。
美術品に安全である材料
金属
セラミック
ガラス
無機顔料(硫黄を含まないもの)
ポリエチレン等のポリオレフィン(ポリプロピレン等)
ポリカーボネート
ポリスチレン
アクリル系樹脂
ポリテトラフルオロエチレン(テフロン)
ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)
綿、麻(目止めされていない、染められていないもの)
紙、マットボード(ラグかリグニン無しの物で、緩衝材入りやアルカリ性処理されているものもよい)
  • 美術品に対して問題のある材料は、変化を起こしたり美術品に危険なものを出す材料です。しかし、材料によっては、用いる方法や期間などを考慮して使用できる場合もあります。例えば、木は酸を含むので問題がある材料ですが、美術品の輸送に用いられるクレートは殆ど木製になっています。
美術品に対して問題のある材料
木(全て酸を含むと考えた方がよい)
コラーゲン以外の蛋白質(蛋白質のほとんどが硫黄を含んでおり暗色化を引き起こすが、高度に精製されたゼラチンは硫黄を含まない)
ニトロセルロース(不安定)
酢酸セルロース(酢酸を放出するものがあるので、事前にテストが必要)
ポリ塩化ビニル(PVC)(全ての塩素化炭化水素は塩酸を放出することがあり、揮発性の添加物を含むことが多い)
ポリ酢酸ビニル(エマルジョンタイプは酢酸を放出するので、事前にテストが必要)
ポリビニルアルコール(酢酸ビニルを原料として作られているので、同様の問題がある)
ポリウレタン(熱にも光にも不安定で、添加物を含んでいる)
染料(硫黄や反応しやすい物質を含んでいる)
防腐剤を含む糊
問題のある材料使用によるしみ、変色の例(写真はクリックで拡大)
セロハンテープ(ニトロセルロース)の使用によるしみ46safematerial01.jpg
ベニヤ板に貼られていたために起きた変色(水色、ピンク内の黒色)46safematerial02.jpg
裏のベニヤ版による焼け(表部分)46safematerial03.jpg
裏のベニヤ版による焼け(裏の様子)46safematerial04.jpg