SEASON2-5

株式会社 絵画保存研究所

Art Conservation Lab.

| HOME | コレクター大学 SEASON2 | SEASON2 第五回目 |

更新日 2014-11-07 | 作成日 2008-04-01

SEASON2 第五回目

マットとヒンジ

今回は、紙作品を入れるマットと、マットに作品をとめるためのヒンジを取り上げます。

29mat02.jpgマットに入れ額装した例 (クリックで拡大)

作品は額装の前にマットに入れます。作品保存上の観点から見ると、マットには起こり得る物理的災害や科学的劣化から作品を保護する役割があります。
マットは、中性のボードと中性の接着剤またはテープを使用して作られます。中性紙のボードは2枚必要です。1枚は台紙(台マット)となり、もう一枚は窓枠(窓マット)となります。この2枚のマットをテープまたはテープ状の紙に接着剤を塗ったものでつなぎ合わせます。本のように開閉できる形にして、中に作品をはさむように固定します。作品の上辺2箇所にヒンジと呼ばれる和紙片を付け、水性糊を使用してこの2点で吊り下げます。紙は湿度が変化すると伸び縮みするので、作品の全ての縁を止めたりすると、絵にストレスがかかって紙が裂ける危険があります。そのため、紙の動きを妨げないよう、このように止めることが必要です。

29mat03.jpgヒンジ拡大部分、Tヒンジ(クリックで拡大)
29mat04.jpgセロハンテープを用いて四辺全部をとめた悪い例(クリックで拡大)

マットの中に保存されることにより、物理的な衝撃や取り扱いの不注意による事故から作品を守ることができます。また、中性紙の働きによって紙の脆弱化、黄変が防止されます。但し、まれに、中性紙に含まれるアルカリに弱い色材やインクが作品に使用されていることがあるので、注意しなければなりません。
額装をすることで、室内の塵埃による汚染や湿度の変化から作品を保護することができます。額の表から見て、まずガラス、次にマットに固定した作品を置き、さらに薄手の中性紙やポリエステルのシートでカバーして裏板をあてると埃などの進入を防ぐことができます。

29mat01.jpg